タイルと私
「タイルの魅力って何ですか?」とよく聞かれます。
水や紫外線に強く、汚れもつきにくく、色あせない機能性に優れた建材です。と答える人が多いでしょう。その通りだと思います。ただ私を最も魅了させるものは、タイルの持つ表現力です。
私はタイルを張る職人として長くキャリアを積んできました。しかし、与えられたタイルを張るだけではもの足らず、タイルをデザインし、自らの手でタイルを作りたいと思うようになりました。メーカーが作るタイルも現場に張られなければ半製品です。デザイナーやメーカーから与えられてタイルを張るだけでは半人前の職人だと思うようになったのです。自分の力で、半製品ではなく完成品を、半人前ではなく一人前にと一念発起し、タイルを作りはじめて15年が経ちました。今でも失敗の連続ですが、以前より楽しく仕事をしています。
粘土を練って焼くタイルは、色と形が自由自在に作れます。機能だけではなく、意匠的にも万能なのです。建物を彩り、形で視覚的に楽しませてくれるタイルこそが私自信の表現です。歌手が歌で人を感動させるように、料理人が料理で人を幸せにするように、私はタイルで人を楽しませたい、感動させたい、幸せにしたいと思っています。
タイルは、人類とともに進化してきました。進化させることが創造するということだと思います。私の仕事はタイルを創造することです。そしてタイルに囲まれて暮らす人たちの笑顔を想像することが、私の幸せなのです。
「タイルの魅力って何ですか?」とよく聞かれます。
その答えを探し求めることが、私の生きがいなのかもしれません。